親愛なる探偵たち①

僕は子供の頃から、ミステリーがかなり好きで、その流れで本が好きになった。
これまで様々なミステリーを読み、その中で多くの探偵達に出会った。
そこで、その探偵達の中で、勝手に自分の好きな探偵のランキングをつけたいと思う。

まず、断っておかなければならないのが、このランキングはあくまで自分が読んだ物語に登場した探偵達の中で行われるものであり、勝手な自分の思い入れなので、諸々ご容赦願いたい。

それにしても、それぞれの探偵にはやはり思い入れがあるので困難を極める。
そこで、発表するのは上位3人にする。
また、それぞれの項がかなり分厚くなるので、まずこの3人を一気に発表する。またそれ以外の探偵達にもその後可能な限り、言及する。

では、完全な私的大好き探偵ランキングを発表します。

第1位 シャーロック・ホームズ

第2位 エルキュール・ポワロ

第3位 アルセーヌ・ルパン



第1位
シャーロック・ホームズ
これは、もういかんともしがたい不動の1位。
この物語のために、ミステリー好き、本好きが始まる。
もう自分の性格、人生の一部になっている。
てか、それは僕自身がホームズ先生に寄せて行ったからだ。
小学校低学年の頃、音楽をたしなむため、バイオリンを習いたいと両親に頼み込み、費用がかかり過ぎるとの理由で反対され、結果、なぜかより費用のかかるピアノは許されて高校卒業まで続ける。

また、卓越した格闘能力を会得するため剣道(やっぱ小学生からして剣ってカッコいい)を習いたいと頼み込み、費用がかかり過ぎるとの理由で両親に反対され、結果、よりホームズに近い柔道を習うことを許される。

当然、小学生の頃の誕生プレゼントは顕微鏡、ちょっと高い拡大鏡、化学実験用具(当然そんなんはそうそう売ってはないので、東急ハンズで上限額だけ決められてバラ売りの試験管や試験管立て、フラスコやピペットなどを「早くしなさい」と頭を叩かれながら有頂天で選んで買った)、広辞苑などを買ってもらった。
一番欲しかったお約束のパイプは、ガチでねだって、ガチでしばかれた。

さらに、めっちゃ親しくなった友達のを『きみ』と呼んだし、
好きすぎて自分の頭の中で構築されたホームズ像を崩されるのが嫌で、映像作品は絶対に見なかった。

今では映画の『シャーロックホームズ』、イギリスBBCのドラマ『SHERLOCK』も見た。それぞれ面白かったし、後者のベネディクト・カンバーバッチはある意味板についていてめちゃくちゃカッコ良かった。が、作品自体は、ホームズ好きとしては決して許すことの出来ない愚をおかしたと言わざる得ない展開がいくつかあったため、好きではない。お話しの展開では、前者の方が良く、面白かった。
ただ、いずれの作品もキャラクター、特にワトソンのキャラが違いすぎる。
ワトソンは、ホームズを決してバカにはしない。

まあ、話しを戻すと、自分は非常に単純な子供だった(今も変わらない)。
その後も濃淡はありつつホームズ敬愛は変わらず今に至り、弟から誕生日プレゼントでもらった中古のホームズ全集を定期的に読み返す。
それにしても、この全集は弟からの数少ないプレゼントの中で最も秀逸で、
僕が一番好きな訳をしてる全集だった(訳によって印象はかなり変わるし、ワトソンのことは「ワトソン君」と呼んでほしい)ことに今でも感動を忘れない。

ここで、ホームズ物語の魅力を挙げる。
まずは、物語性。
もうこれは、読み手をわくわくさせる話しの展開が素晴らしいとしか言いようがない。
風変わりな依頼人、異様な事件、そこにはドキドキもワクワク、涙、怒り、笑い、恋愛(当然ホームズではない)、親子愛なども盛り込まれている。
そして特筆すべきは、この面白過ぎる話しが、極めて平易な文章で描かれていることだ。
濃いことを濃く語ることや薄いことを何か意味ありげに抽象的に書くことは簡単だが、非常に意味あることをわかりやすく端的に述べることは難しい。
この偉業は、翻訳家の方の力によるものもあると思うが、やはり原文が英語の教材になることからも、ワトソンの(まあ、コナンドイルの…)力量なのだと思う。

次に、背景。
この小説は物語とともに、あのころのイギリスの風景や生活、文化、慣習の中にひたり、それらを存分に楽しむこともできる。だから、僕はイギリスに行ったことはないが、僕の頭の中にはあの頃のイギリスが息づいている。

ホームズの思考、捜査方法。
やはり、この点はミステリーの系譜の上でも特筆すべきものだと思う。意識的に主観や不確かな予想を廃して、確かな事実から事件を科学的見地で解明していく。
その捜査方法についてここに書くと、すでにこれまでが長すぎるし、まだこれから続くのでここでは割愛し、次のポワロの項で比較のためまた軽く触れる。
一言で言うと、ホームズはまさに犯罪科学者なのである。

そしてなんと言っても登場人物の魅力。
脇役でさえ、溢れる魅力を持ってしまっているので、ここではホームズとワトソンのみを書く。
この二人は特にキャラが歪められたり誤解されることが少なくないと思う。

まず、ホームズ。
確かに、彼は変人ではある。
部屋の壁にたわむれで弾痕文字を書くし、手紙をナイフでとめるし、女性に興味ないし(決してそっち系でもない)。
ただ、決してぶっ飛んではない。
極めて常識人であり、立派なイギリス紳士だ。
時に法律を犯したりはする(主に住居侵入と傷害)が、しっかり彼の中には規範があって、それを遵守することに強いこだわりがある。
人をむやみに傷つけないし、女性を大切にするし(唯一一回、そうではないことがあったが)、時に情にももろい。
ワトソンが殺されかけたときホームズはぶちギレるし(ワトソンをマジ大好き)、なんやかんや言いながら多くのことに感動もする。
そして、何とも言えない清潔感が漂う。
ファッションだって、特別おしゃれである記述はないが、変装以外はきちっとした服装である。
ちなみに、もはやここで改めて言うことでもないが、パブリックイメージとして定着している鹿討帽とパイプの横顔の影絵は、シドニーパジェットの創作挿絵であり、物語の中で一度もこの格好をする記述はない。この原作から離れたパブリックイメージは、3位のルパンに特に顕著である。
ただ、このパジェットや他の挿絵画家の功績は凄く大きいと思う。

また、な んと言ってもホームズの魅力はそのストイックさである。
余計なことをすべて排除してでも、解明すべき事実に向き合う。この猪突猛進さがヒーローの大切な要素なのだと思う。

その知的さに加え、格闘センスも抜群である。
カッコ良くないわけがない。
そんなホームズも、ボコられたりもするし、失敗もするし、その失敗に対して凄い反省をしたりもする。
その不完全さが、リアリティーであり、やはり魅力でもある。
キリがないので、ここまでにする。

そして、ジョン・ワトソン
彼こそ、ホームズ物語で最も愛されるべき、尊敬されるべき男なのである。
ワトソンについては、ちょっと間抜けであったり、普通の人より劣ったイメージを持つ人がいるかも知れない。
これは全くの誤解である。
彼についての話しの前に、いわゆる彼の『ワトソン役』という立ち位置について述べる。
ミステリーの主人公たる探偵に対して、その物語を記述する相方は、すでにミステリーの始まりと言われるエドガー・アラン・ポーオーギュスト・デュパンと『私』の関係から見ることができる。
それでも、『ワトソン役』という言葉が定着するほど、なぜワトソンなのかというと、それは僕ら一般大衆がワトソンの語るホームズ物語に耳を傾けられる価値を持つ人物だからだ。
言い方を変えると、話しに耳を傾けるに安心できる教養と理性のあるリアルなキャラクターとしてワトソンが描かれているからである。
そのワトソンの特徴を挙げると、まず、物語で重要な医学知識を備える医者であり、格闘センスも銃を扱う経験もある。そして、極めて高い規範意識と、他者への思いやりを持っている。
そして、なんと言っても彼が異常なのは、ホームズの危険な冒険へ飛び込むのに、一度も躊躇をしない。
『助けて欲しいんだ。』と言われたら、即、『喜んで行かせてもらう』と答える。そして何度もホームズの命を救う。
思考能力の点についても、しっかり物語を読めば、ワトソンが誰の目から見ても明らかに愚かな失敗というものは犯してない。
彼は、特異な存在であるホームズに敬意を評しつつ一歩控えておきながら、彼の出来うる力を存分に発揮する。そこになんのてらいもない。
彼こそ、イギリス紳士というものを体現する、
実直で優しくで十分な知性と理性を持ち、いざというときは比類なき勇気を発揮する存在である。

そんな二人だからこそ、この物語は多くの人の共感を得るのだと思う。

次では、2位のポワロを紹介します。てか、ビビるほど長くなってしまった。
そもそも読んでくれる人いるんかな。