電車内でのささやかでイビツな日常2

(続き)
ふざけた中サラに嫌な目にあった女性と別れて、電車で来た方向を戻り、最寄り駅についた頃にはもう夜11時をとうに過ぎていた。
僕の家は住宅地として造成中の山の中腹にあり、駅から自転車に乗り、山は自転車を押して登らなければならない。
自転車に乗っているとき、友達から電話がかかって来たのを思い出したので、山の少し手前で自転車を降りて歩きながら電話をかけた。
最初に掛けてきた友達の要件を聞いたあと、自分にとっても非日常的な体験だった先ほどの出来事を話した。
友達も「マジで?そんなことやっぱりあるんやなあ。」と言いながら聞いており、話しも終わりに近づいたとき、山を登る緩やかな坂道に差し掛かった。
そのとき、背中に不穏な気配を感じた。
振り替えると黒のワンボックスが気味が悪い低速で、ゆっくり僕に近づいてくる。
近づいてくるに従い、そのワンボックスから低音のサウンドがドンドン言っているのが聞こえ、窓が全面黒のスモークガラスなのもわかった。
そのままスッと近づいて来たワンボックスの窓が開き、チンピラ顔が顔を出した。
そいつは僕に何か言っていて、その時はまだ電話中だったため内容は聞き取れなかったが、明らかに僕に道を尋ねるといった風ではなく、ヘラヘラ笑いながら挑発していた。
ここで、本日2度目の緊張、いや今回は戦慄が走り、「ちょっと面倒なことが起きそうやから、一回切るわ。」と携帯を下ろした。
すると、並走していたワンボックスのチンピラ顔の言ってることが聞こえた。
「おい、メガネ。お前だよ、聞こえてないふりすんなって。止まれや。」
確かに僕はメガネをかけている。
それはどうでも良いんやけど、そのチンピラ顔の言葉にギャハギャハ笑う声から、ワンボックスには同じチンピラまがいが数人乗っているのがわかった。
僕は一瞬で多くを考えた。
このまま進むとこいつらチンピラ崩れは、ヘラヘラ 着いてくる。
そして、このまま進むと、まだ造成されていない山のエリアに突入する。
そこで、もしものことがあれば、僕は林に遺棄されて少なくとも明日の朝までは発見されない。
そしておそらくこのワンボックスに少なくともいるだろう3人を同時にボコにする力は僕にはない。
が、
避けられない禍に片をつけるしかないなら、まだ住宅地が広がるこの場所しかない。
覚悟を決めた。
僕は立ち止まってすぐ横に車をつけてるチンピラもどきに言った。
「なんやねん。」
すると、チンピラ見習いはスッと表情を無にして
「お前がメガネやったから、メガネって呼んだだけじゃ。」
そう言うと、ワンボックスは近づいて来たのと同じ低速でバックしていき、曲がり角で切り返して去って行った。

マジであれがなんだったのか、未だにわからない。
そして、繰り返すけど、前の話しもこの話しも、何一つ盛ってないし、何一つ脚色を加えてない。
そして、今思うのは、前の話しもこの話しも、落ち着いて考えればもっとなすべきことがあったように思う。
特にこの話しは、おそらく酒を飲んだり、最悪何かしらの薬をやってる可能性が少なからずあったのだから、後に被害に合う人を無くすためにしかるべき通報などすべきだったのかも知れないと思ってずっと心に引っ掛かっていた。
ただ、幸いその後家の近所で犯罪が起きたというニュースはない。そして、当然この話しも先ほどの友達に電話で話し、小説よりも奇なる現実に二人で笑った。

めっちゃ長くなったけど、電車にまつわる不思議な体験はまだいくつかあるので、追って上げていきたいと思う。