親愛なる探偵たち①

僕は子供の頃から、ミステリーがかなり好きで、その流れで本が好きになった。
これまで様々なミステリーを読み、その中で多くの探偵達に出会った。
そこで、その探偵達の中で、勝手に自分の好きな探偵のランキングをつけたいと思う。

まず、断っておかなければならないのが、このランキングはあくまで自分が読んだ物語に登場した探偵達の中で行われるものであり、勝手な自分の思い入れなので、諸々ご容赦願いたい。

それにしても、それぞれの探偵にはやはり思い入れがあるので困難を極める。
そこで、発表するのは上位3人にする。
また、それぞれの項がかなり分厚くなるので、まずこの3人を一気に発表する。またそれ以外の探偵達にもその後可能な限り、言及する。

では、完全な私的大好き探偵ランキングを発表します。

第1位 シャーロック・ホームズ

第2位 エルキュール・ポワロ

第3位 アルセーヌ・ルパン



第1位
シャーロック・ホームズ
これは、もういかんともしがたい不動の1位。
この物語のために、ミステリー好き、本好きが始まる。
もう自分の性格、人生の一部になっている。
てか、それは僕自身がホームズ先生に寄せて行ったからだ。
小学校低学年の頃、音楽をたしなむため、バイオリンを習いたいと両親に頼み込み、費用がかかり過ぎるとの理由で反対され、結果、なぜかより費用のかかるピアノは許されて高校卒業まで続ける。

また、卓越した格闘能力を会得するため剣道(やっぱ小学生からして剣ってカッコいい)を習いたいと頼み込み、費用がかかり過ぎるとの理由で両親に反対され、結果、よりホームズに近い柔道を習うことを許される。

当然、小学生の頃の誕生プレゼントは顕微鏡、ちょっと高い拡大鏡、化学実験用具(当然そんなんはそうそう売ってはないので、東急ハンズで上限額だけ決められてバラ売りの試験管や試験管立て、フラスコやピペットなどを「早くしなさい」と頭を叩かれながら有頂天で選んで買った)、広辞苑などを買ってもらった。
一番欲しかったお約束のパイプは、ガチでねだって、ガチでしばかれた。

さらに、めっちゃ親しくなった友達のを『きみ』と呼んだし、
好きすぎて自分の頭の中で構築されたホームズ像を崩されるのが嫌で、映像作品は絶対に見なかった。

今では映画の『シャーロックホームズ』、イギリスBBCのドラマ『SHERLOCK』も見た。それぞれ面白かったし、後者のベネディクト・カンバーバッチはある意味板についていてめちゃくちゃカッコ良かった。が、作品自体は、ホームズ好きとしては決して許すことの出来ない愚をおかしたと言わざる得ない展開がいくつかあったため、好きではない。お話しの展開では、前者の方が良く、面白かった。
ただ、いずれの作品もキャラクター、特にワトソンのキャラが違いすぎる。
ワトソンは、ホームズを決してバカにはしない。

まあ、話しを戻すと、自分は非常に単純な子供だった(今も変わらない)。
その後も濃淡はありつつホームズ敬愛は変わらず今に至り、弟から誕生日プレゼントでもらった中古のホームズ全集を定期的に読み返す。
それにしても、この全集は弟からの数少ないプレゼントの中で最も秀逸で、
僕が一番好きな訳をしてる全集だった(訳によって印象はかなり変わるし、ワトソンのことは「ワトソン君」と呼んでほしい)ことに今でも感動を忘れない。

ここで、ホームズ物語の魅力を挙げる。
まずは、物語性。
もうこれは、読み手をわくわくさせる話しの展開が素晴らしいとしか言いようがない。
風変わりな依頼人、異様な事件、そこにはドキドキもワクワク、涙、怒り、笑い、恋愛(当然ホームズではない)、親子愛なども盛り込まれている。
そして特筆すべきは、この面白過ぎる話しが、極めて平易な文章で描かれていることだ。
濃いことを濃く語ることや薄いことを何か意味ありげに抽象的に書くことは簡単だが、非常に意味あることをわかりやすく端的に述べることは難しい。
この偉業は、翻訳家の方の力によるものもあると思うが、やはり原文が英語の教材になることからも、ワトソンの(まあ、コナンドイルの…)力量なのだと思う。

次に、背景。
この小説は物語とともに、あのころのイギリスの風景や生活、文化、慣習の中にひたり、それらを存分に楽しむこともできる。だから、僕はイギリスに行ったことはないが、僕の頭の中にはあの頃のイギリスが息づいている。

ホームズの思考、捜査方法。
やはり、この点はミステリーの系譜の上でも特筆すべきものだと思う。意識的に主観や不確かな予想を廃して、確かな事実から事件を科学的見地で解明していく。
その捜査方法についてここに書くと、すでにこれまでが長すぎるし、まだこれから続くのでここでは割愛し、次のポワロの項で比較のためまた軽く触れる。
一言で言うと、ホームズはまさに犯罪科学者なのである。

そしてなんと言っても登場人物の魅力。
脇役でさえ、溢れる魅力を持ってしまっているので、ここではホームズとワトソンのみを書く。
この二人は特にキャラが歪められたり誤解されることが少なくないと思う。

まず、ホームズ。
確かに、彼は変人ではある。
部屋の壁にたわむれで弾痕文字を書くし、手紙をナイフでとめるし、女性に興味ないし(決してそっち系でもない)。
ただ、決してぶっ飛んではない。
極めて常識人であり、立派なイギリス紳士だ。
時に法律を犯したりはする(主に住居侵入と傷害)が、しっかり彼の中には規範があって、それを遵守することに強いこだわりがある。
人をむやみに傷つけないし、女性を大切にするし(唯一一回、そうではないことがあったが)、時に情にももろい。
ワトソンが殺されかけたときホームズはぶちギレるし(ワトソンをマジ大好き)、なんやかんや言いながら多くのことに感動もする。
そして、何とも言えない清潔感が漂う。
ファッションだって、特別おしゃれである記述はないが、変装以外はきちっとした服装である。
ちなみに、もはやここで改めて言うことでもないが、パブリックイメージとして定着している鹿討帽とパイプの横顔の影絵は、シドニーパジェットの創作挿絵であり、物語の中で一度もこの格好をする記述はない。この原作から離れたパブリックイメージは、3位のルパンに特に顕著である。
ただ、このパジェットや他の挿絵画家の功績は凄く大きいと思う。

また、な んと言ってもホームズの魅力はそのストイックさである。
余計なことをすべて排除してでも、解明すべき事実に向き合う。この猪突猛進さがヒーローの大切な要素なのだと思う。

その知的さに加え、格闘センスも抜群である。
カッコ良くないわけがない。
そんなホームズも、ボコられたりもするし、失敗もするし、その失敗に対して凄い反省をしたりもする。
その不完全さが、リアリティーであり、やはり魅力でもある。
キリがないので、ここまでにする。

そして、ジョン・ワトソン
彼こそ、ホームズ物語で最も愛されるべき、尊敬されるべき男なのである。
ワトソンについては、ちょっと間抜けであったり、普通の人より劣ったイメージを持つ人がいるかも知れない。
これは全くの誤解である。
彼についての話しの前に、いわゆる彼の『ワトソン役』という立ち位置について述べる。
ミステリーの主人公たる探偵に対して、その物語を記述する相方は、すでにミステリーの始まりと言われるエドガー・アラン・ポーオーギュスト・デュパンと『私』の関係から見ることができる。
それでも、『ワトソン役』という言葉が定着するほど、なぜワトソンなのかというと、それは僕ら一般大衆がワトソンの語るホームズ物語に耳を傾けられる価値を持つ人物だからだ。
言い方を変えると、話しに耳を傾けるに安心できる教養と理性のあるリアルなキャラクターとしてワトソンが描かれているからである。
そのワトソンの特徴を挙げると、まず、物語で重要な医学知識を備える医者であり、格闘センスも銃を扱う経験もある。そして、極めて高い規範意識と、他者への思いやりを持っている。
そして、なんと言っても彼が異常なのは、ホームズの危険な冒険へ飛び込むのに、一度も躊躇をしない。
『助けて欲しいんだ。』と言われたら、即、『喜んで行かせてもらう』と答える。そして何度もホームズの命を救う。
思考能力の点についても、しっかり物語を読めば、ワトソンが誰の目から見ても明らかに愚かな失敗というものは犯してない。
彼は、特異な存在であるホームズに敬意を評しつつ一歩控えておきながら、彼の出来うる力を存分に発揮する。そこになんのてらいもない。
彼こそ、イギリス紳士というものを体現する、
実直で優しくで十分な知性と理性を持ち、いざというときは比類なき勇気を発揮する存在である。

そんな二人だからこそ、この物語は多くの人の共感を得るのだと思う。

次では、2位のポワロを紹介します。てか、ビビるほど長くなってしまった。
そもそも読んでくれる人いるんかな。

盲導犬に心を射ぬかれる

標題は特にシャレとかではないです。

今日、エレベーターに乗りこむと目の不自由な女性と盲導犬が乗っていた。
すぐに、この女性はどうやって降りる階をわかるのかと思ったが、音声ガイドで「~階です」とアナウンスがあるので、それでわかるのだと気づいた。
盲導犬は、回りに人がいるのに動揺する様子もなくしっかり微動だにしない。

大型のペットを飼ったことがないこともあるのか、自分は動物にそんなに特別な感情を抱いていない。
小さい頃に弟が飼っていた亀とジュウシマツは可愛いと思って育てたが、そのジュウシマツを頻繁に狙うよその猫のせいで、猫は嫌いになった。
それでも、犬は嫌いではないし、
身近でしっかり見ることもなかった盲導犬を偉いなあと見ていた。

すると、「二階です。」のアナウンスとともに微動だにしなかった盲導犬がピクリと動き、目の不自由な方を先導して開いた扉から出ていった。
その瞬間、僕はおもいっきり胸を射ぬかれた。
君はどうやって、主が二階で降りることをわかったのか。
事前に主から言われてたんだろうが、その指示を的確に把握して実行するなんて、すごいなぁ、君は。
その甲斐甲斐しいまでの盲導犬の動きに、一瞬で心を持っていかれた。

今日はそんな新しい発見ができて、疲れた心身も偉大な彼(彼女?)のお陰で癒された。

【電車】イチゴ大福と僕と見知らぬサラリーマン

一昨日上げたブログと、同じ電車でまた昨日稀有な体験をしたため、その熱が冷めないうちに、その同じ電車で起きた過去の不思議な話しを書いておく。

それは、一昨日のブログで書いた事件より、さらにちょっと前、
また同じ電車と同じ時間帯の出来事。
電車に乗り込むと出発駅でまだ出発まで時間があることから、それほど席は埋まってない。
そこで、ドア横の席に座る。
向かいの座席には、老夫婦と大学生らしき女性が並んでいる。
すると、横のドアから若いサラリーマンが乗ってきた。
アルコールが入っているようで少し顔が赤いが、誠実そうな顔だった。
するとそのサラリーマンは、僕と老夫婦の間の通路に立ったまま
「やっべ。マジでやばいなぁ。」
と言っている。
何がやっべなのか、全くわからなかったが、手に持ったビニール袋を見ながら、
また「やっばいわぁ。」と言ってる。
そこで、僕もそのビニール袋を見た。

それは半透明のタイプで、よく見ると、大量のどら焼が透けて見える。
そのどら焼は、トレイにラップがしてあるもので、透けて見えるだけでもかなり入っており、トレイのいくつかはラップがはずされ、どら焼がビニール袋内に出ている。

それを見て、やっべやっべ言ってる。
そのどら焼インフレ状態がヤバイのかヤバくないのかと言われたら、それをヤバいと評価する個人がいてもおかしくはないのかな、など思っていると、そのサラリーマンが
「これ…~(駅名)までもつかなぁ…」
と言った。

その駅名は、この出発駅の次のターミナル駅に当たるもので、時間にして30分くらいで到着する。
ここで、ちょっとこの人何言ってるんだろうかと、混乱を来した。
前の老夫婦と女子大生は明らかにこれに気づいていて、女子大生は笑いを堪えているのか顔を伏せ、老夫婦はいぶかしげな表情で、ちらちらサラリーマンを見ている。
すると、サラリーマンは僕の左に座り、手に持ったビニール袋を覗き混んでいる。
そして、それに手を突っ込むと、立ち上がり、
「良かったら、これ食べて下さい。~駅までもたないんで。」
と向かいの老夫婦に何かを渡そうとした。
サラリーマンの配慮なのだろう。
裸のどら焼ではなく、それは個包装された二つのイチゴ大福だった。
にしても、やはりそれは普通の行為ではないので、老夫婦も固い笑顔で
「ありがとう。でも大丈夫です。お気持ちだけ。」
とやんわり断る。
それでも、サラリーマンは
「あ、もしいらなかったら捨ててくれて構いませんので。」
とペコペコ頭を下げながら、イチゴ大福を二人の膝に置いた。
そして、また袋に手を突っ込むと
老夫婦の隣の女子大生に同じように言って、膝にイチゴ大福をそっと置いて、満足そうに僕の左に戻った。
そこで、電車が動き出した。

そして思った。
僕には? と。
一番近いの僕じゃね?
甘いものに目がない僕は、脳内に糖分が不足して判断能力が低下してる今、
おそらく、リスクをおかしてでもそのイチゴ大福を食べるぜ?と。
加えて、程よい距離感で、「その大量のどら焼どうしたんですか?」みたいな会話で、イチゴ大福の恩に報いる構えはもうできてんぜ、と。
しかし、残念ながらそのサラリーマンは満足そうに眠りに落ちていた。

君は今、選択を誤った
そんな忸怩たる思いを乗せて電車は走った。これを勝手に『イチゴ大福の変』と呼んでいる。

連続で電車ネタをあげたので、今度は違うのにします。
ただ、電車内での不思議な出来事はまだまだあるので、今度あげるときはその中の『エセやくざ事件』と呼んでるものを書きます。
以上。

【電車】奇妙な符号的連続性を示す世界②

続き)
電車が動き出した。
位置確認をしておくと、
僕の左には先ほどのしょうもないイチャモメをしてた女性がいて、右には二十代中盤から後半の女性が座っている。

その女性は、結婚式かパーティーの帰り(手荷物が少なかったからおそらく後者かな)なのか、黒いドレスに華やかな装いをしている。
僕の前には4、5人の女性のグループが立っている。

電車が動きだして、しばらくしたときだった。
右の礼装女性がガッツリ僕の肩に寄りかかってきた。
これまで、電車で男性が肩に寄りかかってきたことはあったけど、自分としてはそれは特に何の問題もないことだった。
ノートパソコンで何か作業してるとか、何か書いてるとか以外は、特に自分の肩で隣の人が休むことは全然気にしない。別にデメリットもないので、宿り木として自分の肩を使ってくれて良い。めっちゃ匂う人とかなら別だけども。

今回は、女性だった。
しかも、それがただ肩に寄りかかられた程度ではなかった。
どれだけかっていうと、
女性の頭が僕のアゴとほっぺたにくっついていて、女性は全く力を抜いて寄りかかってきてるので、女性の頭と顔を僕の肩と胸と腕で包みこんでる形だった。
完全に『しなだれかかる』状態を思い浮かべてくれたら、たぶんそれが描写として近い。

ただ、やぶさかではなかった。
にしても、別に前述のように肩を貸すことは全く問題ないんだけど、このままの状態を続けると客観的には喜んでこれを受け入れてるみたいやし、
かといって、頭をグイって押すのも 気が引けるしなぁ。
そんな風に迷った末、右に寄りかかられているので、左手を伸ばし、女性の反対側の肩をトントンと叩いて起こそうとした。
起きない。
また、トントンとしたが、やはり起きない。
少し時間をおいて、またトントンしたが起きない。
それで、三回連続 トントンをした。
それでも、全く動かない。
そこで、にわかに緊張が走った。
この女性の異常な寄りかかりは、本当に何か女性に異常が起きてるのではないかと。
それで女性の肩を揺すってみた。
が、それでも全く反応がない。
冷や汗が出てきた。
肩を叩いたり揺すっても全く反応がない。
ただ、これ以上女性の身体に触って異常を確認をすることははばかられた(前回も書いた、弱った人に漬け込む的、中島みゆきの『空と君のあいだ』的プライドっす。今回あんま関係ないか。)し、
かといって、本当にこの女性の何か身体機能が停止して倒れかかっている場合はこの事態を放置できない。

そこで、他の女性に、この女性の状態をはかってもらうべく、目の前に立っていた女性達に「すみません」と声をかけた。
すると、目の前の女性グループの人は慌てて胸の前で手をパタパタと振って
「大丈夫、全然気にしてませんから!」
と言った。
一瞬何のことか?と思ったが、
おそらくこの女性は僕と礼装女性がイチャイチャしてる、もしくは礼装女性が酔ってしまったのを僕が謝っている
と勘違いしてる、と思いあたった。
そこで、
「さっきからこの女性に全く反応がなくて。確認してもらえますか?僕は男なので。」
とお願いした。

すると
「え?この人はあなたのお連れさんじゃないんですか?」と女性達が真剣な顔になり、礼装女性の脈を計り、顔を覗きこみ体調を丁寧に確認してくれた。
そして、
「脈もありますし、呼吸も顔色も大丈夫そうです。」 とのことだった。

ちょうどその時、礼装女性が枕の上でより心地良いポジションを探すように、頭をおき直したので、僕もはじめて安心した。
そして女性達が声をかけ続けてくれたおかげで、しばらくして、礼装女性も起きた。
姿勢を正し「すみませんでした。」と言った後は恥ずかしそうに下を向いていた。
ただ、またその後も寄りかかってきたけど。

そして、無事に自分の降りる駅について、女性達が「後は大丈夫だから」と力強く送り出してくれた。

めっちゃ長くなったが、昨日ブログに書いた久しぶりの電車でまた、今日も非日常的体験をしたその連続性がなかなか面白かった。
そして、これが僕にとって女性を肩でガッツリ休ませるはじめての経験になり、何かあったのかも知れない孤独な魂を安寧へいざなえたのではないかと、思う。
なので、この事件を勝手に『銀河鉄道の夜』事件と呼ぶ。
そう呼びたいので。

【電車】奇妙な符号的連続性を示す世界①

今日、また電車内で不思議な体験をした。
昨日、前の出来事として電車の中、そしてそこから降りた後の不思議な出来事を書いた。
昨日書いた出来事は数年前の出来事で、今は環境も変わり、主に乗る鉄道会社も時間帯も何もかも違っている。
けど、今日はある用事でその帰りに乗った電車は、たまたま昨日ブログに書いた電車で時間帯も同じだった。その昨日の今日でまた、その同じ電車で稀有な体験をするという連続性に何かしらのメッセージがあるんじゃないかってくらい、個人的には驚いている。ただ、これから書く出来事は、昨日のほどインパクトはない。
そして、繰り返しになるけど、全く脚色も話しをもったりもしてない。だから、今日のは特に落ちがない。

電車に乗り込むと、僕の左に若い女性が座っており、僕が座ってすぐに、今度は右に二十代中盤から後半の女性(なんでそれがわかったのかは、後で出てきます)が座った。
電車が動き出すまでまだ数分あり、また僕は昨日書いたブログと同じようにイヤホンをつけ膝上の本に目を落とした(自分は電車内でいつも本を読んでるわけではなく、大抵は窓の外見るかスマホをいじってるので、これも奇遇)。
すると、若い男が乗り込んできて、左の女性にめっちゃ顔を近づけて何か話しかけてる。
イヤホンで音楽聞いてたので最初はっきりとは、聞こえなかったが、注意して聞いてみると、何か痴話喧嘩だった。
ケンカってほどではなくて、
「まだ怒ってんのかよ。」
「…」
「なあ、今日は楽しかったんだろ?」
「…」
「恥ずかしがらずに言えよ。」
みたいに顔近い男子が女の子の肩とか腕とかめっちゃ触ってる。それを女子は振り払う。
「なんだよ、じゃあ、もう行くぜ? 」
って顔近男子が去ろうとすると(そのカオチカはその電車ではないっぽい)、
その女子が足でその男のズボンの裾を引っかけて引き留める。
「なんだよ。怒ってんのか、拗ねたふりしてんのか、どっちかにしろよ。一緒に帰ってほしいのか?」
と、女子の腕を触り、頭をなでる。(女子の頭をなでる男については思うところがあるので、いずれまた書く。)
すると女子はまたそれを軽く振り払う仕草をする。

なんだ、これ。

僕が顔近い男子って繰り返すのは、女子にめっちゃ顔近づけるってことは、そのすぐ横にいる僕にも必然的に顔が近いわけで、
暑苦しい顔を近づけられてる上、なんかスカした言い回しを近距離で聞かせられるのがずっと不快だったわけで。
その女子のイチャモメ(イチャイチャしながらもめてる)、もなんやねんって思ってたし。
そんな、他所でやってくれって、やり取りが発車までの数分あり、カオチカ男子は「じゃあな 」って電車を降りていった。
この出来事だけで、このブログに書こっかなって思ったものだったが、その後、僕自身に降りかかる出来事が起きる。
続く)

電車内でのささやかでイビツな日常2

(続き)
ふざけた中サラに嫌な目にあった女性と別れて、電車で来た方向を戻り、最寄り駅についた頃にはもう夜11時をとうに過ぎていた。
僕の家は住宅地として造成中の山の中腹にあり、駅から自転車に乗り、山は自転車を押して登らなければならない。
自転車に乗っているとき、友達から電話がかかって来たのを思い出したので、山の少し手前で自転車を降りて歩きながら電話をかけた。
最初に掛けてきた友達の要件を聞いたあと、自分にとっても非日常的な体験だった先ほどの出来事を話した。
友達も「マジで?そんなことやっぱりあるんやなあ。」と言いながら聞いており、話しも終わりに近づいたとき、山を登る緩やかな坂道に差し掛かった。
そのとき、背中に不穏な気配を感じた。
振り替えると黒のワンボックスが気味が悪い低速で、ゆっくり僕に近づいてくる。
近づいてくるに従い、そのワンボックスから低音のサウンドがドンドン言っているのが聞こえ、窓が全面黒のスモークガラスなのもわかった。
そのままスッと近づいて来たワンボックスの窓が開き、チンピラ顔が顔を出した。
そいつは僕に何か言っていて、その時はまだ電話中だったため内容は聞き取れなかったが、明らかに僕に道を尋ねるといった風ではなく、ヘラヘラ笑いながら挑発していた。
ここで、本日2度目の緊張、いや今回は戦慄が走り、「ちょっと面倒なことが起きそうやから、一回切るわ。」と携帯を下ろした。
すると、並走していたワンボックスのチンピラ顔の言ってることが聞こえた。
「おい、メガネ。お前だよ、聞こえてないふりすんなって。止まれや。」
確かに僕はメガネをかけている。
それはどうでも良いんやけど、そのチンピラ顔の言葉にギャハギャハ笑う声から、ワンボックスには同じチンピラまがいが数人乗っているのがわかった。
僕は一瞬で多くを考えた。
このまま進むとこいつらチンピラ崩れは、ヘラヘラ 着いてくる。
そして、このまま進むと、まだ造成されていない山のエリアに突入する。
そこで、もしものことがあれば、僕は林に遺棄されて少なくとも明日の朝までは発見されない。
そしておそらくこのワンボックスに少なくともいるだろう3人を同時にボコにする力は僕にはない。
が、
避けられない禍に片をつけるしかないなら、まだ住宅地が広がるこの場所しかない。
覚悟を決めた。
僕は立ち止まってすぐ横に車をつけてるチンピラもどきに言った。
「なんやねん。」
すると、チンピラ見習いはスッと表情を無にして
「お前がメガネやったから、メガネって呼んだだけじゃ。」
そう言うと、ワンボックスは近づいて来たのと同じ低速でバックしていき、曲がり角で切り返して去って行った。

マジであれがなんだったのか、未だにわからない。
そして、繰り返すけど、前の話しもこの話しも、何一つ盛ってないし、何一つ脚色を加えてない。
そして、今思うのは、前の話しもこの話しも、落ち着いて考えればもっとなすべきことがあったように思う。
特にこの話しは、おそらく酒を飲んだり、最悪何かしらの薬をやってる可能性が少なからずあったのだから、後に被害に合う人を無くすためにしかるべき通報などすべきだったのかも知れないと思ってずっと心に引っ掛かっていた。
ただ、幸いその後家の近所で犯罪が起きたというニュースはない。そして、当然この話しも先ほどの友達に電話で話し、小説よりも奇なる現実に二人で笑った。

めっちゃ長くなったけど、電車にまつわる不思議な体験はまだいくつかあるので、追って上げていきたいと思う。

電車内でのささやかでイビツな日常

僕は本当に電車の中で、またはホーム、駅前で不思議な出来事に遭遇する。
まずはその経験のなかで、そんなことあるか?って話を書く。以下の話は物語チックに書くけども、誓って何一つ脚色を加えていないし、盛ってもいない。マジでありのままの出来事なので、逆にオチもないことをご了承願いたい。

前の話しになるが、
夜10時手前くらい、電車に乗った。
その電車は自分が降りる駅まで3駅停車する(この情報はこれから、特に重要でない)もので、席がシンプルに並列に並ぶ構造の車両だった。
空いてる席に座りイヤホンをつけ本を読む。
途中の駅で人々が乗り込み、ちょうど全ての人が席に座れるくらいの密度になった。
そのまま電車は進み僕は音楽を聴きながら、膝の本に目を落としていた。
が、何か違和感を覚えて顔を上げる。
すぐ斜め前に吊革を持って立つ中年のサラリーマンがいた。
車両の構造から席が並列であるのと同様、吊革も席の頭上に並列に設置されており、おのずと吊革に捕まって立つサラリーマンは席の方を向いている。

席の混み具合は前述の通り全ての人が座れるくらいに埋まっており、だから、その車両内で立っているのは当該サラリーマンだけであったし、そのサラリーマンが座ろうと思えばそのための空きスペースはいくつかまだあった。
なのに、その中年サラリーマンだけは立っている。
そして座席との距離が異様に近く、下を凝視している。
ただ、違和感の正体はそれではなかった。
当該中年サラリーマン(以下、中サラと言う)は縦方向にスイングしているのだ。
僕の横には若い女性が座っていた。
つまり、その中サラは、僕の横の女性を上から凝視しながら電車の揺れに任せた風に身をくねらせ、自分の局部を女性の顔に向かってフワフワ近づけているのだった。
女性が顔を上げてもその視線をはずさず、ひたすらリズミカルに女性の顔に向かって局部をスイングさせている。
それに気づいたとき、僕は
「マジか、これ…」
と思った。
そして、さすがにこれはマズイだろとにわかに緊張が走り、とりあえず、何かあったときのためイヤホンを外して顔を上げ、中サラを見ていた。
相変わらず、中サラのスイングは続き、女性はもう敢えて見ないようにするためか、下を向いた。
しばらくして、電車が駅に止まった。
そこで中サラが移動したので、降りるのかと目で追ったが、中サラは少しは離れたドアに寄りかかり、そのままこちらをじっと見ている。

すると、先ほどまで中サラのスイング攻勢にあっていた女性が僕の方に顔を寄せ、小声で話しかけてきた。
「今の見てました?」
まさか話しかけられるとは思ってなかったが、自分にとっても初めての異常な事態だったし、気持ちの悪い行為にかなり腹が立っていた。
「はい、見てました。ちょっとあり得ないっすね。」
「やっぱり、そうですよね。まだ、あの人こっち見てますよね。」
「まだ見てますね。」
「私、降りる駅まで、まだしばらくあるんですけど、ちょっと怖いですね。」
「どこまで行かれるんですか?」
「~駅です。」
「そうなんですね。僕も~駅まで行くんで、このまま僕も注意しておきます。」
実は、この時、僕は良いカッコしていた。
本当はもうすぐ着く次の駅が家の最寄りだったので降りなければならなかったが、カッコつけて嘘をついた。
ただ、これは信じて頂きたいんだけども、下心とかは全くなく、このままほっといて電車を降りるなど出来なかっただけで。
個人的には、弱った女性に漬け込むとかはゲスの所業だと思っている。
「君が涙のときには僕はポプラの枝になる
孤独な人に漬け込むようなことは
言えなくて」
(中島みゆき『空と君のあいだに』 より)
を地で行こうとしてるような硬派気取り、ゆえに、女性関係は全く華々しくない(それだけが原因じゃない)。
話しが逸れた。
そしてそのまま電車は進み、僕らは前を見ながら、時々「まだ見てますか?」「まだ見てますね。」とやり取りしながら無事、女性の降りるべき駅に着く。
一緒に電車を降りたが、中サラは人混みに隠れ、もう見えなくなった。
一応用心のため、人がはけるまで待ってみたが、中サラはそのまま電車に残ったのか、見通しの良くなったホームに完全に姿はなかった。
そして、安心して二人で階段を登り、連絡通路まで進んだ。
女性はそのまま別のホームで電車に乗り換えるとのことだったので、連絡通路で別れる。
女性は去り際に「今日は本当にありがとうございました」と深々と頭を下げていたが、顔を上げた時の笑顔はとても美しかった(はい、カッコつけてます。)。
女性が去ってしまうまで待って(今から僕はさっきとは逆方向の電車に乗って戻らなければならず、それを見られてしまうと嘘ついたことがバレるので)、家路についた。

ここまでで、めっちゃ長くなってしまった。
実は、この日の非日常的出来事は、これでは終わらない。
だからこそ、冒頭に書いたように、この日は特に異常だったのだ。
この後の出来事については
To be continued…